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リテンションマーケティングとは?重要性や手法・成功事例を紹介

公開 2023年9月12日/更新 2025年6月18日/17 分で確認

リテンションマーケティングとは?重要性や手法・成功事例を紹介
作成者
Team Braze

リテンションマーケティングは、自社のリピーターやファンを獲得するために欠かせないマーケティング手法として、さまざまな企業で取り入れられています。

この記事では、リテンションマーケティングの特徴と重要性、具体的な手法、企業がリテンションマーケティングを成功させるためのポイント、Brazeによる事例などをご紹介します。

1. リテンションマーケティングとは?

リテンションマーケティング(Retention Marketing)とは、既存顧客との関係を維持するためのマーケティング活動のことです。「Retention」は、英語で保持や維持の意味を持っています。

もともとマーケティング活動は「新規顧客の開拓」と「既存顧客との関係強化」の2種類に大別できますが、リテンションマーケティングは後者に当たります。維持と名前が付いていますが、実際に目指すのは「強化」です。メールで割引クーポンを配布し再度の購買を促すなど、既存顧客を自社のファンに育てていく取り組みが例として挙げられます。

2. リテンションマーケティングはなぜ重要なのか

リテンションマーケティングが企業にとって有効な理由には、以下の4点があります。

2.1. 顧客のLTVが向上する

LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)とは、ある顧客がその生涯で自社に与えてくれる利益の総額のことです。

娯楽やサービスが飽和しつつある現代では、新規顧客獲得の難易度が高まっており、新たな収益の確保先として、既存顧客のLTVの向上が提案されています。リテンションマーケティングにより顧客と自社が結びつく期間を延ばすことは、LTVを向上させる直接的な施策となります。

LTVの詳細については、以下の記事も併せてご確認ください。

>> LTV(ライフタイムバリュー)とは?重要性や計算方法、高める方法・ポイントについても紹介

2.2. 売上を獲得する際のコストが安価

既存顧客から売上を獲得するリテンションマーケティングは、施策のコストを安価に抑えやすいのも特徴です。

マーケティング分野では、既存顧客との関係維持にかかるコストは新規顧客を獲得するコストの1/5で済むという「1:5の法則」が知られています。既存顧客はすでに自社の製品・サービスをある程度認知していること、また顧客情報をもとにパーソナライズされた営業活動ができる(不特定多数にアプローチをする必要がない)ことが主な理由です。

2.3. 休眠顧客を掘り起こせる

しばらく購買がない、現在はサービスを利用していないなど、自社から距離を置いている「休眠顧客」の再獲得を狙えるのも、リテンションマーケティングの特徴です。

通常、休眠顧客は、「期待ほどの質ではなかった」「使い方がわかりにくかった」など、何かしらの不満があるために離れています。リテンションマーケティングの過程で不満を分析し、改善策を提案すれば、再び自社の顧客として復帰する可能性があります。

2.4. 顧客の満足度向上・新規顧客獲得が進む

リテンションマーケティングにより顧客満足度を向上させることは、新規顧客の獲得にも寄与します。これは、良い口コミの増加などによる間接的なブランドイメージの向上が集客に好影響を与えるためです。

低コストで収益を確保しやすく、既存顧客との関係強化だけでなく新規顧客の獲得も期待できるリテンションマーケティングは、利益向上の大きな可能性を秘めています。

2.5.優良顧客の育成に繋がる

リテンションマーケティングでは、購買頻度や金額の多い優良顧客(ロイヤルカスタマー)を育成できます。既存顧客の属性やニーズにあわせた体験を提供することで、自社への愛着を引き出せるためです。

ユーザーが自社やブランドに抱く愛着は、顧客ロイヤルティと呼ばれます。その重要性や向上のメリットは以下の記事で解説しています。

>>顧客ロイヤルティとは?顧客満足度との違いや向上させるメリットについて解説


3. リテンションマーケティングの手法

では、リテンションマーケティングの具体的な手法を見ていきましょう。

3.1. メールマーケティング

もっとも王道ともいえる手法がメールマーケティングです。いわゆるメルマガのほか、以下のような種類があります。

  • ステップメール

事前に設定したタイミングで段階的に送信するメール

(例:購買の翌日に初歩的な使い方ガイドを送り、7日後には応用編をお届けする)

  • ターゲティング(セグメント)メール

特定の属性を持つ(セグメントされた)顧客層に送信するメール

  • リターゲティングメールある行動をしたユーザーに自動で送信するメール

(例:会員登録後に商品ページAを二度訪れた顧客に当該商品の割引クーポンをメール送信)

  • 休眠発掘メール

休眠顧客を呼び戻すためのメール

  • メール広告自社製品やキャンペーンの情報をお知らせする広告メール全般

(メルマガのようなコンテンツは含まず純粋に広告のみで送信したもの)

3.2. SNSマーケティング

顧客に親近感を抱いてもらいやすい手法がSNSマーケティングです。FacebookやInstagramなどに自社アカウントを用意し、例えば「開発こぼれ話」のような身近な社内情報を投稿することで、顧客のファン化を目指します。

新商品のプロモーションなど即時的な宣伝効果を期待する場合には、拡散力の高い外部インフルエンサーに依頼する手もあります。双方向のやり取りが可能な特徴を活かして簡易的なサポート窓口にもできるなど、応用の利きやすい手法です。

3.3. オフラインマーケティング

オフラインマーケティングとは、セミナーやワークショップ、商品発表会など、現実の場で行うイベントを指します。実際に新商品やサービスを手で触れられたり、スタッフに疑問や悩み事を対面で質問できたりと、顧客満足度を大きく向上させやすい手法です。イベントの種類によっては顧客同士のつながりが生まれるケースもあるなど、自社の熱心なファンを獲得しやすい点も優れています。

3.4. プッシュ通知

顧客の端末にメッセージを送るプッシュ通知も、リテンションマーケティングの手法の一つです。事前の許可が必要という制限こそありますが、「リアルタイムで情報を伝えられる」「個人に応じた内容を伝えやすい」「開封・クリックしてもらえる確率が高い」といったメリットがあります。

プッシュ通知は、その特徴から顧客へのパーソナライズされたアプローチに活用しやすく、Brazeでも重要な機能として搭載しています。詳細については以下の記事も併せてご確認ください。

>>プッシュ通知の仕組みや種類にはどんなものがある?メリットや通知ポイントを紹介

3.5. レコメンド

レコメンドとは、顧客の購買履歴やECサイト上の行動(閲覧したページ、滞在時間など)を基に、おすすめの商品・サービスを提案する機能です。同時購入してほしい関連アイテムを伝える「クロスセル」や、購入済み・購入検討中の品物の上位モデルを提案する「アップセル」などの手法に活用されます。ユーザーの満足度と顧客単価の上昇を同時に狙えるのが特徴です。

3.6. カスタマーサポート

カスタマーサポートは、顧客からの問い合わせに対応する、いわゆる「お客さま窓口」です。既存顧客のトラブルを解消でき、満足度を高められることから、広義のリテンションマーケティングの一種とみなされます。

具体的な方法としては、公式サイトへの問い合わせフォームの用意や、電話番号&メールアドレスの公開が一般的です。最近では軽度の質問に対応する簡易窓口としてSNSを利用したり、24時間素早く返答を行えるチャットボットを活用したりする企業も増えています。

3.7. カスタマーサクセス

カスタマーサクセスはカスタマーサポートと似ていますが、こちらは相談を待つのではなく、自社から能動的に行動し顧客の悩みを解消すること、またその部門を指します。顧客に電話やメールで不明点がないかを尋ねたり、自社サービス内のユーザーの行動履歴から不満や疑問点を分析したりします。

カスタマーサクセスはほかの手法と重複する部分もありますが、顧客満足度の向上を主な目的としているのが特徴です。

3.8. リテンション広告

リテンション広告とは、既存顧客との関係強化や休眠顧客の掘り起こしなど、リテンションマーケティングを意図した広告のことです。

例えば、自社アプリに新機能が登場するタイミングで、現在は利用をやめている顧客をターゲットに広告配信を行うことで、「久しぶりにアプリを開いてみようか」と利用熱の再燃を狙います(例:ニュースサイトのバナー広告、動画サイトで視聴中に挟まれる広告)。

「製品Aを購入した顧客に新商品Bを宣伝する」など、ターゲットと配信内容の工夫次第で多様な使い方ができる点でも優れています。

3.9. 動画マーケティング

動画マーケティングは、文字通り動画を使ったアプローチのことです。実際に製品を使う様子を動画にしたり、開発者トークによりブランドが持つストーリーを共有したりと、こちらもさまざまな形で活用できます。

動画は視覚と聴覚の両方で訴求できることから顧客の心に響きやすく、記憶にも残りやすいのがメリットです。

3.10. データ分析ツールの導入

顧客の属性や行動、施策の効果など、データを分析できるツールの導入もリテンションマーケティングの手法の一つです。

リテンションマーケティングでは、一人ひとりに最適な顧客体験を提供し、満足度やロイヤルティを高めます。そのためには、顧客を特徴別にセグメント化したり、数値からニーズを見出したり、そもそも散在している情報を一元管理したりなど、データを活用できる環境の構築が欠かせません。

リテンションマーケティングのアプローチやキャンペーンについては以下の記事もあわせてご確認ください。

>>解約を未然に防ぐ: リテンションを高める2つのアプローチ

>>結果をもたらすリテンションキャンペーン10選


4. リテンションマーケティングを成功させるポイント

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続いて、企業がリテンションマーケティングを成功させるためのポイントをご紹介します。

4.1. 顧客のセグメント化を行う

特に大切なのは、顧客のセグメンテーションを丁寧に行うことです。リテンションマーケティングの魅力である、「(相手が既存顧客であるために)会員登録情報や過去の購買履歴が手元にあること」を活かすためには、データから顧客を適切に分類し、それぞれに最適化されたアプローチを考案する必要があります。

4.2. 適切なKPIを設定する

施策の効果を正しく把握するためには、事前にKPI(重要業績評価指標)を設定することも欠かせません。リテンションマーケティングに活用できるKPIには、以下が挙げられます。

  • リテンションレート

計算式:継続顧客数÷新規顧客数×100(%)

企業が一定期間で獲得した顧客(購買活動を行った顧客)のうち既存顧客の割合。どの程度リピーターを維持しているのかを把握できる。既存顧客維持率とも呼ばれる。

  • ユニットエコノミクス

計算式:LTV(顧客生涯価値)÷CAC(顧客獲得単価)顧客一人あたりの採算性のこと。このまま顧客数を増やすべきか、採算性を高めるべきかの判断に役立つ。

  • チャーンレート

計算式:解約した顧客数÷期間当初の顧客数×100(%)

一定期間内のサービスの解約率、退会率。顧客満足度を直接的に推し量ることができる指標。

4.3. セグメントに合わせた施策を考える

顧客のセグメント化とKPI設定の次には、セグメント別に適切な施策を検討していきます。

例えば、休眠顧客を復帰させたいなら離反理由の特定とその対策を考える、既存顧客の顧客単価向上を目指すならアップセルやクロスセルを提案するなど、対象と目的に適したアプローチを探りましょう。

4.4. ツールの活用や導入を検討する

前述の通り、リテンションマーケティングではデータ分析ツールの導入が有効です。セグメント化やKPIの設定においても、人力での作業とは比較にならない効率を生み出します。

ツールの導入で重要なのは、目的の明確化です。現在は収集できていないデータを集めて保管したい、手元にあるデータを高度な知識が不要な形で利用したい、など、目的に応じて適切なツールは変わります。

4.5. PDCAサイクルを回す

リテンションマーケティングは一度限りの取り組みでは効果が得られません。施策を実行し、KPIを測定し、分析から改善策を生み出し…と何度もPDCAサイクルを繰り返し回していくことで、継続的に顧客と自社の関係性を維持できます。

何度もアクションを繰り返せるように、費用・スケジュール・人員の配置などで無理をしないことが大切です。また、優れたITツールの導入によりリテンションマーケティングの各種コストを低減する方法も考えられます。

5. リテンションマーケティングの成功事例

続いて、リテンションマーケティングの成功事例をご紹介します。

5.1. 事例1

あるファッション系EC企業では、顧客の属性や過去の購買に応じて自社アプリのホーム画面の表示内容を変えるAIレコメンド機能を導入しています。

衣服は顧客の属性次第で求める内容が大きく変わるアイテムです。同じ30代の男性でも、仕事で使える作業服が欲しい、流行のアイテムを押さえたい、子供服が欲しいなど、需要は異なります。

同社では、一人ひとりに興味関心を惹くことができる衣服の表示を実現した結果、リテンション率の改善に成功しています。

5.2. 事例2

ある大手ファーストフードチェーンでは、自社のX(旧Twitter)を起点にリテンションマーケティングを展開しています。

同社のXでは、リツイートでクーポンや店舗で使える金券が当たるキャンペーンを不定期に実施。新発売のハンバーガーの情報を拡散し、普段からよく食べている顧客にも、何ヵ月も食べていない顧客にも来店を促しています。

また「アプリで限定クーポンを配布中!」などとして自社アプリのインストールを促すことで、次の一手に繋がる顧客接点も確保しています。


6. Brazeを活用した事例も紹介

Brazeを用いてリテンションマーケティングに成功した事例もご紹介します。

6.1. KFCインド「Bucket It」キャンペーンで顧客維持と収益を拡大

KFCインドでは、リテンションマーケティングを通じて新規顧客を22%、リピーターを27%増加させることに成功しました。

同社では、顧客やキャンペーンの分析を総合的に行いつつ、多様なチャネルからのアプローチを実現する手段としてBrazeを導入。自社アプリと外部ゲームを連携させたキャンペーンを実施しました。

このキャンペーンでは、ゲームをプレイしたユーザーに期間限定の割引特典をプレゼント。特典の期限切れ間近などユーザーの状況に合わせてプッシュ通知やメール、アプリ内バナーなど適切な手段で連絡し、多くの顧客に対して利用を促すことに成功しました。

>>KFCインド、ゲーミフィケーション「Bucket It」キャンペーンで顧客維持と収益を拡大

6.2. IBMがBrazeを活用してCVを最大5倍にアップ

リテンションマーケティングの実例として参考となるのが、アメリカのテクノロジー企業「IBM」です。IBMは、Brazeを活用したリテンションマーケティングにより、特定条件下のコンバージョン率を最大5倍にまで向上させました。

クラウドコンピューティングの分野で成果を挙げる同企業にとって、既存顧客との関係性の維持は必須の課題です。しかし、IBM Cloud には150種類以上の製品・サービスがあり、一社一社異なる顧客体験の完全な把握は難しいのが実情でした。

そこで、Brazeとそのパートナーである「Amplitude」「Segment」を含めた合計3種類のITソリューションを導入。顧客のセグメント化を進め、それぞれにパーソナライズされたメールを配信できるようになった結果、年間経常収益が80万ドルも向上するなど、確かな成果を手にしています。

>>IBMが、Brazeを活用したライフサイクルメッセージ配信で コンバージョンを最大5倍にアップ

7. リテンションマーケティングを実施するならBrazeの導入がおすすめ

Brazeでは、リテンションマーケティングに有用なAI機能「Predictive Suite」も提供しています。

この機能では、ユーザーの解約リスクや、検討中の施策内で望んだアクションを実行してくれる可能性などを、0~100のスコアでAIが予測。今すぐの対処が必要な顧客を抽出し、反応してもらえる確率の高い施策でフォローアップできます。

前述のIBMやKFCインドの事例のように、Brazeなら多様なチャネルの利用や顧客のセグメント化も自由自在です。まずは以下のリンクよりお問い合わせください。


8. まとめ

リテンションマーケティングは既存顧客との関係性を維持するためのマーケティング手法であり、新規顧客獲得の難易度やコストが問題となる現代において優れた解決策となる可能性を秘めています。

Brazeでは、カスタマーリテンションに関する最新の知見をまとめた無料レポートも配布しています。自社が何から取り組むべきか、検討をはじめる際の資料としてぜひご活用ください。

>>最新のカスタマーリテンションの資料はこちら


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