公開 2025年1月27日/更新 2025年1月27日/7 分で確認
アプリマーケティングの世界は広大で、アプローチも多岐にわたります。広告やアトリビューションを活用してユーザーを獲得し、パフォーマンスを追求するという切り口がある一方で、Brazeのようなツールを使って、ユーザーのエンゲージメントやリテンションを高めるという観点もあります。この二つの観点によるKPIは、企業ではそれぞれ別の担当者が責任を持ち、個別に運用されているケースも少なくありません。
このような運用では施策ごとにちぐはぐで違和感のある訴求を行なってしまう潜在的なリスクがあり、残念なユーザー体験を引き起こしかねません。顧客がしっくりくるような体験をイメージし、データを組み合わせることで運用することで、新たな価値を生み出す可能性が広がります。具体的には、ユーザー獲得で得られたデータを活用し、リテンション施策を強化する、あるいはエンゲージメントデータを基に広告効果を最適化するといった形です。
先日の記事ではBrazeと相性の良い仲間たちを紹介しました。この記事では、私の前職のAppsFlyerでの経験から、広告効果計測を行うモバイルアトリビューションツール(MMP: Mobile Measurement Platform)との連携を具体例として掘り下げてお伝えしたいと思います。有用な3つのユースケースと、実施の際に留意すべき点についてまとめます。
ユーザーがアプリをインストールした経路、つまりそのユーザーがアプリを使い始めるきっかけとなった広告やキャンペーンには、興味・関心やニーズが反映されているはずです。MMPにはこのような情報が「インストールアトリビューション」として蓄積されています。この情報を基にユーザーに合わせたメッセージをBrazeで配信することで、ユーザーのエンゲージメントをさらに高められます。
例えば、あるブランドの商品の広告キャンペーンに反応しアプリをインストールしたユーザーに対しては、アプリ内でもそのブランドの商品を訴求するメッセージを表示した方がコンバージョン率が上がるのではないでしょうか?
また、メディアごとに主要なユーザー層が異なることを考慮して、流入経路となったメディアに応じて、メッセージのトーンを変えるという工夫も可能かもしれません。
MMPとの統合により、Brazeでインストールアトリビューションでセグメントを作り、施策を実行することができるようになります。具体的な統合手順につきましては、以下のユーザーガイドのページをご参照ください。
この統合における留意点としては、インストールアトリビューションのデータはサーバー間での連携となるため、Brazeに届くまで若干のタイムラグが発生します。そのため、ユーザーがアプリインストールした直後のメッセージを出し分けに使うのは厳しいです。ただし、コンテンツカードによるアプリ内でのバナー表示をアトリビューションに合わせて決めるなど、永続的にユーザーごとにパーソナライズするといった用途には有効なアプローチになると思います。
メールでのマーケティングでは、ユーザーがコンテンツにスムーズにアクセスできることが重要です。施策の内容によっては、メールからモバイルアプリを直接起動したり、アプリ内の特定ページに遷移させたい場合も出てきます。このためには通常、OSに合わせたディープリンクの実装(iOSではUniversal Links, AndroidではApp Linksの実装)が必要になりますが、やや敷居が高い面もあります。
MMPのディープリンクの機能ではこの実装手順を簡素化させています。また、すでにAppsFlyerやAdjustをご利用の場合には、OneLinkやトラッカーのURLでディープリンクが使えるような実装も完了している場合が多いと思います。このリンクをBrazeからのメール配信でも利用することが、メールでのディープリンク活用の近道になります。
ただし、Brazeで配信されるメール内のURLへのリンクは、通常、クリックトラッキングドメインのURLに置き換えられてしまい注意が必要です。つまり、Brazeのキャンペーンやキャンバスのメール編集画面で、OneLinkやトラッカーのURLをそのまま入れるだけではディープリンクはうまく機能しません。OneLinkやトラッカーのURLを指定する箇所に、クリックトラッキングを無効にするタグを併せて埋め込む必要があります。
なお、SparkPost等のESPの手順に従うことで、クリックトラッキングドメインを利用しつつ、ディープリンクも行うような実装も可能ですが、サーバーとアプリ両方に手を入れる必要があり、難易度も高いです。そのため、多くのお客様はクリックトラッキングを無効化しながら、ディープリンクのURLを利用する方法を採用しています。
MMPのディープリンク機能を使うことで、ユーザーがコンテンツにスムーズにアクセスできるということに加えて、Brazeでの施策も一つの流入経路として他の広告キャンペーンとの比較・分析ができることも一つのメリットになるのではないでしょうか。
MMPで取得した既存ユーザーの広告ID(IDFA/GAID)とイベントのデータを広告メディア側にポストバックし、休眠ユーザー向けの広告を出して復帰を促す。というケースはよく用いられるリターゲティング手法です。しかし、メールやプッシュ通知でリーチできる既存ユーザーに対しても広告でリターゲティングするのは、広告費の浪費に繋がります。
BrazeのAudience Syncでは、キャンバスのフローにより特定の条件に合致するユーザーのデータを広告メディア側に連携することが可能です。具体的にはメールやプッシュ通知を送ったものの反応しなかったユーザーの広告IDをGoogleやFacebook, TikTokといったメディア側に送信、そのオーディエンスだけに絞ってリターゲティングを行うということも可能です。
考慮点としては、Brazeはデフォルトの実装では広告IDを取得しないため、IDFAやGAIDをBraze SDKに連携するための追加の実装が必要になります。これには、iOSではプライバシーマニフェストにBraze固有のデータを追記するなど、各プラットフォームのプライバシー保護方針に合わせた対応が含まれることも念頭におく必要があります。
別のやり方としてはAppsFlyerのAudiences機能では、Amazon S3に出力したBraze Currentsのデータを読み込むことができます。AppsFlyerの管理画面から、Brazeの施策のプッシュ通知やメールに対する開封などのイベントも考慮してセグメントを作成し、メディア側に連携することも可能です。
この方法の詳細は、AppsFlyerサポートページ内のAudiences機能に関するガイドをご参照ください。
いかがでしたでしょうか?ユーザー獲得と既存顧客エンゲージメントで担当者が分かれてしまっていると、連携の敷居が高い面もあるかもしれません。ただ、それぞれのデータを組み合わせることにより、ユーザー獲得観点では「ファーストパーティーデータ活用による広告投資効果の最適化」、既存顧客エンゲージメントの面では「アトリビューションデータによる顧客嗜好の把握とコンバージョン率の改善」の両方が実現できる可能性を秘めています。まだ実践されていない場合にはぜひチャレンジしてみていただきたいです。
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